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■3月6日桐生安吾忌レポート
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今年の「桐生安吾忌」会場は、桐生市市民文化会館でした。”繭”をイメージした特異な形状のビルです。桐生は往年の織物の街です。
今回は、坂口綱男さんの写真展「安吾のいる風景から明日の写真へ(3月6日〜7日)」と併せて開催でした。写真家としてデビューされてからおよそ30年、ジャンルほぼすべて網羅ということで、風景写真、デジタルアート、俳人の肖像、安吾にまつわる写真等々80点あまりです。これだけ網羅したのは、展覧会として初めての試みだそうです。
同日15時からは、展示室内に特別に客席を設けて、綱男さんによる講演会&ギャラリートークも開催されました。

ギャラリートークの後、会場を4階会議室に移して、18時からは「〜没後五十五周年〜安吾忌の集ひ」開催です。人数にして、およそ50〜60名くらい集りました。
会場準備中、特別に安吾さんのデスマスク(ブロンズ製)が展示されました。木の箱から丁重に取り出され、アクリルのディスプレイに収められ、ケース越しに拝しました。没地のこの桐生では初めての展示になります。
ちなみにこのデスマスクは、「新潮日本文学アルバム『坂口安吾』」末尾ページに掲載されているものと同じものです。だが、やはり実物ははるかに生々しいです。正面からだけでなく、横からもじっと眺めてみると、その鼻がものすごく大きくて立派なのには驚きました。日本人離れしていると思います。合掌です。

穏やかなデスマスクに見守られながら、桐生安吾忌開始です。まず、安吾を語る会代表奈良彰一さんによる挨拶でスタートしました。
安吾を語る会は、これまで20年継続してきました。安吾に親しむきっかけになればと思って続けております。はじめの頃は、5〜6名程度でしたが、次第に人数が膨れてきて、いまでは大人数が集まる会となりました。これからもご愛顧いただきますようお願いしますとのことでした。
引き続いて、新潟市文化観光スポーツ部長小黒和弘さんによる挨拶ということで、今年度の安吾賞及び新潟市特別賞についての報告等をいただきました。

そして、今回のメインイベント、ゲストの琵琶奏者古屋和子さんにより、琵琶弾き語り「信長」をご披露です。
後ろのカーテンをぱっと開け放ち、桐生のきらびやかな夜景をバックに琵琶弾き語りです。ムード満点です。内容は長編「信長」のうち「珍童独立」というテーマに絞って、尾張のうつけ者として評判だった青年時の信長が、乱世の中で次第次第に頭角を現してくる箇所を語りました。要所要所で、琵琶の弦をはじきながら、ストーリーを淡々と読み上げました。
意外だったのは、発声そのものは、むかし風の唸るようなものではなくて、現代のはっきりした発音でストーリーを朗々と読み上げていくことでした。信長がいきいきと個性を発揮していくストーリーをわかりやすく堪能できたと思います。
なお、これは2次会でわかったことですが、今回の琵琶弾き語りで、古屋さんが長大な「信長」を素材に選んだ理由は、単純で、自分でこれをやってみたい、と思って取り上げたそうです。当初打ち合わせの段階では、「風博士」「夜長姫」とかいった短編がいいだろう、ということで話を進めていたのですが、「信長」をやりたいというのは、関係者も驚かれたそうです。

琵琶弾き語りが終わると、引き続いて綱男さんのスピーチが入り、そして桐生副市長八木計二さんによる挨拶につづいて、群馬県生活文化部長小川恵子さんにより、献杯! となりました。献杯のあとは、立食パーティー形式で、各々自由に歓談をしました。

会場では、安吾ゆかりの「したじ飯(おけさ飯)」が参加者全員に振る舞われました。レシピは、まずゆで卵を白身と黄身とで別々に裏ごしして、2色に分けてご飯の上にのせる。焼きのりを細かく刻んでちらし、おろしたわさびを少々きかせます。三ツ葉を飾り付け、その上から熱いすまし汁をかけると出来上がりです。さっぱりした味わいです。プロ料理人による盛り付け画像も右に掲示します。色鮮やかな盛りつけをご覧ください。

にぎやかな歓談のあちこち挟んで、スピーチも続けられました。新潟市文化政策課池田洋介さん、安吾の甥にあたる村山玄二郎さん、松之山安吾の会高橋主計さん及び文芸評論家七北数人さんへとスピーチリレーしながら、楽しい時間を堪能しました。
21時で一次会はいったん〆て、それから2次会も駅前の居酒屋で開催されました。

さて、桐生安吾忌には、縁あって、ここ3年連続で遊びに来てます。ここの安吾忌は、趣向が毎年違います。ピアノ演奏、作品朗読、そして今回は琵琶弾き語りです。安吾にリスペクトした表現形式はたいへん多彩だと思います。
また、桐生はこういったイベントに使えるだけの大きな建物がたくさんあります。次回はどこでやるのかも楽しみです。

安吾忌
 
安吾忌
 
安吾忌
 
安吾忌
 

桐生は奥深いです。今回は、近くは関越方面だけではなく、遠方からは、まず岩手県からはわたし(片道7時間!)、そしてはるばる三重県からもご来客2名ありました。
来年も、全国からみんなでこの桐生に遊びに行きましょう! 2月17日東京安吾忌は平日開催が多いですが、この桐生安吾忌は土日開催なので、なにかの旅行がてら遊びに行きやすいと思いますよ。みなさんもぜひです。では。
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(吉岡和年)