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■第60回安吾忌 レポート
*(北浦 学)
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 第60回安吾忌が東京の如水会館で行われました。
 私は初参加でした。自分の一番好きな作家の、ゆかりの方々や、ファンのみなさんにお会いできるというのは、楽しみな反面、不安を強く感じていました。しかし、会場に入るとすごく和やかな雰囲気で、初参加の私を、過剰に歓待するでもなく、会を楽しめるように、見守ってくださり、大変ありがたかったです。

司会の木村さんの開会宣言、安吾の長男で写真家・エッセイストの坂口綱男さんの献杯で始まりました。なごやかな歓談の合間に安吾ゆかりの方々のスピーチが。松之山安吾の会の高橋主計さん、漫画『戦争と一人の女』などの作品もある漫画家の近藤ようこさん、ヴィジュアリストの手塚眞さん。手塚さんは、60回の記念にということで、まだ誰にも話していないという安吾作品映画化の腹案を披露してくださいました(詳細は当日の列席者の胸の内にとどめましょう)。完成の日を待ちたいと思います。

立食形式のパーティ(机と椅子もありました)で、自由においしいお酒や料理をいただきながら、スピーチを拝聴しました。私は初参加ながら図々しく友人に頼んで坂口綱男さんや七北数人さんに紹介いただいたり、安吾の曾孫に当たる蒼空(そら)くんの頭を撫でにいったり、後から思い返すと恥ずかしいくらい、はしゃぎ回っておりました。

イベントは安吾の演劇や朗読で有名な千賀ゆう子さんによる「紫大納言」の朗読でした(アフリカの民族楽器「爪ピアノ」の自演付き)。「紫大納言」は大好きな作品。変幻自在な語りと楽器の乾いた音が響き合い、安吾と千賀さんの共演ともいえる不思議な作品世界を現出して、大変感動しました。黙読した時には個人的には消化不良だった「童子」登場のくだりの意味がはじめてわかり、その芸術的な迫力に圧倒されました。

続いて、安吾の姪の飯塚みわさん、安吾研究会の山根龍一さん・大原祐治さん、安吾 風の館の岩田多佳子さん、桐生タイムスの蓑崎昭子さんのスピーチ。みなさんの安吾への思い、安吾忌の思い出など、いくら語っても語り尽くせぬ様子で、一番好きな作家の一番のファンの集いにいる幸せを感じました。

 続いて噂に聞く、「安吾カルトクイズ」。60回スペシャルで全15問の出題でした。「坂口安吾」の文字が印刷された原稿用紙や、坂口綱男さんオリジナル写真、貴重な初版本など、豪華賞品が掛っているとあっては自然に力が入ります。司会の木村さんによって読みあげられる難問の数々。木村さんの「わかりません、こんなものは」「てきとうに書きましょう」などの飄々としたトークが楽しかったです。優勝者は安吾ML主宰の吉岡和年さんで13問正解! 次点は11問正解者が3名。以下、4問正解の方まで賞品が渡りました。私は当然のようにほとんど分からなかったのですが、山勘がビギナーズラックで当たったのもあり、8問正解!文庫『道鏡・狂人遺書』の初版本を1冊いただきました。これは心底うれしかった。

その後、新潟・文化現場の小川弘幸さん、将棋ペン倶楽部の本多俊介さんら大勢の方々のスピーチがあり、綱男さんの閉会の言葉で、如水会館における一次会はお開きとなりました。

今回の参加でいちばんの、意外な収穫はロックバンドGRAPEVINEのファンに出会えたことです。GRAPEVINEのヴォーカリスト田中和将氏は安吾ファンを公言しており、学生時代の私は彼が「堕落論」を愛読していることを知って興味を持ち、その1stアルバム『退屈の花』を聴いてファンになったのでした。GRAPEVINEの歌詞に垣間見える安吾の影響を見つけるにつれ、いわば相乗的にバンドと安吾を好きになっていきました。同じような回路で音楽と文学に触れてきた方とたまたまお話できたこと。これも同好の士が直接顔を合わせる会の魅力なのだろうと思いました。

 安吾忌が無事60回の開催を迎えることができたのも、関係者の方々、長年のファンの皆様の努力と、やはり今もなお若い読者を増やし続けている安吾作品の魔力が源泉なのだろうと思います。

 安吾忌に出席してからますます彼の作品への愛着が増し、また好きな作品から読み返しています。生涯折に触れて読み続けるだろう作品群を残してくれた坂口安吾に改めて感謝を。そしてまた来年も、安吾忌でみなさんにお会いしたいと思います。

   

 
安吾忌写真
坂口綱男さん
 
安吾忌写真
千賀ゆう子さんによる「紫大納言」の朗読
 
安吾忌写真
会場の様子
 
安吾忌写真
安吾の姪の飯塚みわさん
 
安吾忌写真
安吾カルトクイズ優勝者。 安吾ML主宰の吉岡和年さん