坂口安吾デジタルミュージアム

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コラム

第六十六回「安吾忌」レポート

 三度目の正直、テッパンに手をつきてヤケドせざりき者は現れるのか。そんな期待をしている方はいないだろうが、今年も「風流お好み焼き 染太郎」にて第六十六回安吾忌が盛大に行われた。

 三年前から安吾由来の染太郎が会場となっているが、安吾の命日に、彼が愛した店で坂口綱男氏を囲んで飲み食いし、安吾について思う存分語り合うのは、ファンとしては最高に贅沢な時間ではないだろうか。

 献杯をしてから、といいたい所が、その前からすでにあちこちのテーブルが和やかな歓談で沸いていた。ゆるく、カオスに始まっていくのも、安吾忌らしいだろう。綱男氏のご挨拶、花園大学の浅子逸男教授のご挨拶を頂戴してから、染太郎のお好み焼きに舌鼓を打っていると、恒例のカルトクイズの時間である。

 二択なので、運でもある程度当てられそうではあるが、これがまた毎年なかなかに難しい。「次の一文で始まる小説は何か」と一見オーソドックスな設問ながら、選択肢が
 A.「人生案内」
 B.「安吾人生案内」
 と引っかけ問題めいたものから、桐生で安吾が愛玩した金魚の種類を答えさせるというマニアックなものまで、安吾のことを愛し抜いていないと答えられない問題ばかり。

 全問正解者はなかったものの、九問正解者が出て沸き立つ。さすが安吾忌、剛の者が多く、八問、七問正解者は多数出た。景品数は限られているため、正解者は正々堂々じゃんけん勝負となる。令和になっても「最初はグー」である。五問正解者までが景品を入手した。景品となる貴重な安吾の本をご提供くださる神保町のけやき書店(書「房」ではないのだ、皆様くれぐれもご注意アレ)の佐古田亮介氏、また写真をご提供くださる綱男氏はもとより、どこからネタを引っ張ってくるのか難問をご用意される七北数人氏にも感謝、感謝である。
 なお、佐古田氏も六問正解で景品を取りに行ったので「自分で持ってきた本を回収するのか!?」と目を丸くしたが、綱男氏のサイン入り写真を入手してホクホクしていた。ただし帰りに置き忘れていたのは秘密である。

 その後も、今年の五月からNHKで始まる福士蒼汰主演による『明治開化 新十郎探偵帖』(原作「明治開化 安吾捕物帖」)の台本(なんと贅沢なことにカラー表紙である!)や、安吾から編集者・渡辺彰への手紙や当時の写真などが一部テーブルでお披露目されるなど、貴重な品々を目の当たりにできるのも有難い。

 テッパンで手を焼く者もなく、無事一次会を終え、二次会は「浅草酒場 岡本」へ。某人気医療ドラマのロケでも使われた場所だそうで、広い空間を活かした下町風の良い雰囲気の居酒屋である。浅草らしく電気ブランもあり、ここぞとばかりに頼む者も多かった。

 ここでお開きかと思いきや、例年にまして熱くなったのか、月曜だというのにまだ飲み足りぬと三次会へとなだれ込む面々も。フリージャズやマニアックなフォントの話、宮澤賢治など様々な話題が尽きることなく始発まで語り明かし、解散となった。

 近年はアニメやゲームの影響もあり、若い参加者も増えている。変わり続けるのが都市の宿命とはいえ、オリンピックを目前に東京はより目まぐるしくその姿を変えてゆくが、染太郎が令和の時代にも当時の趣を残したまま残っているように、安吾の奥深い魅力を次の世代へと語り継ぎたい。

竹上晶(スタジオカッツェ


綱男氏撮影


綱男氏撮影


綱男氏撮影


遺影と角瓶-金田理佐子氏撮影


染太郎外観-金田理佐子氏撮影


店内の色紙-金田理佐子氏撮影