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「石の思ひ」

一連の自伝的小説群の序章。安吾幼少期の伝説がここに詰め込まれている。実際は健康優良ガキ大将だった自分の明るい面、良い面は書かれていない。父や母を批評する目にも厳しさばかりが目立つ。

それでも両親を不当におとしめてはいないし、悪意もない。評価すべき点は評価し、公正な目で彼らの性格を描き出そうとしている。

その上で、父は子供の心をもたない人だったから好きではない、母とは幼い頃からいがみ合っていた、と言っているだけだ。それだけなのに――、全体のトーンはどうしてこんなに寒々しいのだろう。

自分に愛をくれなかった父の心に、深く、深くオモリを垂らしていくクライマックス。延々、読点でつながっていく文章から、押し殺した叫びが聞こえてくる。

愛されたい……。強い安吾のイメージにそぐわない、小さな願いがちらっとよぎる。でも、それはあくまでも言外の、束の間のこと。この小説は、そんな束の間の悲しみのパッチワークなのだ。

その果てに「そして、石が考へる」という氷のような一文に至り着く。どうしようもない孤独。愛情乞食。

これは悲願の物語である。父母に愛を求めて、求め方がヘタクソで叶わず、どんどん孤独に閉ざされていく少年。石が人間の姿に変じる「紅楼夢」の物語を引き、自分の心は、悲願が叶う前の「石」のようだ、と少年は思う。

文章のあちこちににじみ出る「祈り」。それら一つ一つが「石の思ひ」の結晶なのだ。

 
(七北数人)
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