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「小さな山羊の記録」

 1949年4月19日に東大病院神経科を退院した安吾は、翌日「精神病覚え書」を執筆、同月30日に「小さな山羊の記録」を書いた。どちらも精神を病んだ直後とは全く思えない、明晰な論理展開で組み立てられている。

 前者は病院内の観察記録が中心で、精神病一般についての持論展開に社会批評的なおもしろさがあった。対するに本作では、自分自身の狂気を真正面から見つめ、発病から退院までの心の動きを自ら確かめるように分析したものである。

 いかに明晰な意志をもって狂気のただなかを突き進んだか。どれほどの明晰さで狂気を克服していったか。圧倒的な意志の力が文章の全部にこもっている。
 これは安吾の、再生を賭けた決意表明なのだろう。

 冨士見のサナトリウムの「透きとおるような皮膚をした青年たち」と、病室の自分とを対比させるために、あえて「鉄格子」という言葉を何度も使う。病院を出てもなお、安吾の心は仮想の鉄格子を指向するかのようだ。

「心の奥に、大いなる怒りが燃えつゞけて、治ることがないようである。ゲヘナの火だろう。私は放心からさめて、苦笑しながら、こう呟くのが、鉄格子の中の時から、癖になりだしていた」

 ゲヘナとは聖書に書かれた地獄のこと。タイトルの「小さな山羊」も、おそらくは聖書のマタイ伝25章に由来するのだろう。黙示録の時、羊たちは祝福されて神の国に迎えられ、山羊は呪われる、とイエスは言う。その直立した角からの連想か、キリスト教では山羊は悪魔の使いであり、永劫の火に焼かれるのが定めだ。安吾は自らを山羊になぞらえ、ゲヘナの火に焼かれることを望んでいる。熱烈に。鉄格子の中で。

 
(七北数人)
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