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「Pierre Philosophale」

 ピエール・フィロゾファールとはフランス語で、哲学の石、賢者の石のこと。ハリー・ポッターで有名になったが、歴史は古い。中世の錬金術師が探し求め、それさえあれば卑金属から金が精製できるといわれた秘石。永遠に不可能なこの錬金の夢想は不老不死の願いとも結びついて、ファンタジーや幻想文学、RPGなどでおなじみのアイテムになっている。
 文壇デビューして1年余、25歳の安吾はこんなにも老成していた。鴎外を思わせる筆致で、人生の深い諦念を描いたこの小説は、「白痴」を読み解くカギになるかもしれない。

 主人公は、ゲーテの「ファウスト」やバルザックの「『絶対』の探求」のように、独り、絶対の真理を探求しつづけて魂を滅してゆく者たちの末裔。
「白熱」や「宝石」は心の奥処にしずもり、悲しさもまた「一滴のしづく」のようだ。見知らぬ土地を流れさまよっても、「心の果て」はどこにもない。随所にまき捨てられたきらめく言葉が、むなしさを増幅させる。

「存在が絶滅し去ることの凄艶な美しさ――その、生きるものの考へあたはぬ白熱の美」

 しずかな絶望が、心を腐蝕させていく。その芯には、しかし亡霊のように、錬金の秘石がある。決して失われてはならない、パンドラの箱のその底に――。

 初の長篇「麓」にとりかかるまでの1年間、安吾が書いた短篇群はヴァラエティに富み、しかも秀作揃いである。ドッペルゲンガー奇譚「群集の人」、随筆風の「母」、軽妙なファルス「村のひと騒ぎ」、少年の純愛をさらっと一筆書きした「傲慢な眼」、神経症的かつ性的な煩悶を描いた「小さな部屋」、これらの間に、終末の詩のような本作が入る。

 安吾自身かなり愛着をもっていたようで、15年後の1947年初め頃、これを自分の作品集に入れたいと考えた。戦死した隠岐和一の未亡人に宛てて「この小説を隠岐君は非常に愛読してくれて、雑誌を大切にしてゐた」から掲載誌があれば貸してほしい旨、書き送っている。結果は残念ながら見つからず、生前の単行本には未収録に終わった。

 
(七北数人)
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