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「宿命のCANDIDE」

 菱山修三のヴァレリー訳詩集『海辺の墓』の出版を祝って書かれた文章だが、密度の濃い詩的な表現には気迫と力がこもり、構成は小説的である。
「彼の詩は絶対の極点を貫き走つてゐる」と評し、「わが友は日本の生んだ最も偉大な詩人の一人となるであらう」と絶讃する。友を語ってこれほどに熱い安吾の文章は他にない。
 菱山は『青い馬』の同人になった21歳の時、すでに堀口大學に認められて第1詩集『懸崖』を刊行していた。神童の詩はその冒頭から鮮烈だった。

「私は遅刻する。世の中の鐘が鳴つてしまつたあとで、私は到著する。私は既に負傷してゐる。……」

 安吾は文学上の、というより魂の、同志を得たように思っただろう。ひょろりとして病弱だが、死をも顧みぬ激しさを内に秘めた闘士。
 菱山が語る、燈台の灯をめざして激突死する候鳥の話は、「ひた走り、熱狂し、死と共に自らの宇宙を終るほかに方法はない」菱山その人にも見え、「その思ひは、また私にも強い」と安吾は書きつける。まるで自ら候鳥になりきって、飛ぶ、決意表明のように。

「私の熱狂は白熱する太陽となつて狂ひ輝くことはあつても、停止する不可能となつて低迷することを好まない」

 なお、タイトルの「CANDIDE」は18世紀フランスの作家ヴォルテールの小説名。ファルスの傑作として安吾がよく例に出す「カンヂダ」がこれ。人を疑うことを知らない純真な主人公カンディードが、理不尽に次々ふりかかる不幸を不幸とも思わず、すべてが最善と信じて前向きに生きていく話。突き進む宿命の候鳥にも似ている。

 ついでに本文を読む際の参考に、註を2つ。ベルチカルマン(verticalement)もペルパンヂキュレエルマン(perpendiculairement)もフランス語で「垂直に」の意。「人生は一行のボオドレエルにも若(し)かない」と書いたのは芥川龍之介。「或阿呆の一生」中の警句であり、芥川が自分の小説を嘆き卑しめたわけではない。念のため。

 

(七北数人)
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