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「青鬼の褌を洗う女」

 オールタイムで人気の高い作品。本作の愛読者には猫好きが多いのではないかと思ったことがある。

 気がつけばウトウト眠ってばかりいる主人公サチ子。何もしないでいる退屈が楽しく、旅に出れば行き当たりばったり、テキトーな駅で降りて気ままに遊ぶ。リゾート感覚といおうか、日向ぼっこ感覚といおうか、サチ子の人生観はどこをとっても猫っぽい。

 ちょっと前までは無一物、生きるも死ぬも風まかせなのが気楽だった。今は飼い主ができて、一人ぽっちになるのがチョット怖くなった。たまには若いオスとも遊ぶけど、でも、飼い主のオジサンにじゃれつくと喜んでもらえるのが何より嬉しい。

『クラクラ日記』から浮かんでくる三千代夫人のイメージが、まさにこんな感じだ。

「終戦後のせいもあろうか、いや私はもともとそうなのだ。さきのことなど何も考えてはいなかった。どうにかなるだろうと思う。よくても、悪くても、黙って受取るだけの覚悟をきめている」

 こんなふうにサラリと書く三千代サンはサチ子に似て、そして安吾にも似ている。

 本作は三千代と出逢って以後、おそらく初めて書かれた小説で、しかも腹膜炎で入院中だった三千代の枕もとで綴られたので、文章にはおのずといとおしさが滲む。

「エゴイズム小論」でも触れたように、この時期、安吾はエゴイズムを全くもたない天性の娼婦を書いてみたいと思っていた。相手の喜びにのみ奉仕する、神のような存在。本作がその実験でもあったわけだが、思った以上に三千代の印象が色濃い。

 交互に眠ったり起きたりして、お互いの寝顔を見つめて幸福でいられた日々。約束に2時間遅れた言い訳に「風や雨が強くて」と言う三千代に呆れて、でもなぜか怒らなかった話。二人のその時々の心もちがみんな、物語にとけこんでいる。新鮮なオモチャを見るように三千代を見、いとおしく思う安吾の目が随所に感じられる。

 めったに自作を読み返さなかった安吾が、この作品だけは何度となく読み返していたという話も頷ける。自分にないものが、ある。三千代サンがこの中にいるからだ。

 
(七北数人)
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