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「目立たない人」

 ごく普通の若者群像を描きながら、人間心理の不可解な面に体当たりしていく感じが新鮮な、小粒の佳品。

 戦後のきらびやかな代表作群とちがって、晩年の諸作はタイトルも内容も地味で、本作に象徴されるとおり、目立たない。「握った手」「中庸」「牛」「文化祭」「人生案内」などなど、タイトルだけ並べてみても、そっけないことこの上ない。

 語り口もファルス風で軽い感じだが、その中身は見た目よりも黒っぽく、空恐ろしいものを含んでいる。まさに新しい領域に踏み込んだ感があり、現代でもこういうタイプの小説はなかなか出てこないのではないかと思わせられる。

 大学の演劇部を舞台にした客観小説であるが、大半は昌三の視点で描かれる。目立たない人の1人で、無類の軟弱男。

 目立たない人のもう1人は、安吾文学によく登場する欲望むきだしの怪力女。本能のままに生きる大猫のようなケイ子は「ケダモノのように不潔」とも評されるが、昌三はむしろ彼女を崇拝している。

 欲望のおもむくままに行動する彼女は完全に無垢で、無垢であるほど、行動は不可解に企みを蔵する。男をたらしこむ時には全力で媚態も示すし、目の前で別の男にちょっかいも出せる。盗みだって平チャラだ。目立たないことを逆に武器として最大限に活用する。

 そんなケイ子の獣っぽさを昌三は分析して、「益々もって偉大」だと感じ入るのである。

 昌三はファルスの主人公らしく、どんな目にあっても肯定に肯定を重ねるお人好しなのだが、ケイ子や他の部員たちを観察する心理分析が独特で面白い。現実の人間世界を鋭く射抜いてもいる。昌三の心で辿っていくと、ケイ子はどんどん黒く、大きく膨らんでいく。

 リアル・ファルスの創出。人間の底知れなさを描出する新しい手法を安吾は獲得したようだ。

 
(七北数人)
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