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「孤独閑談」

「古都」の続篇。エッセイ「探偵の巻」が原形である。

 京都での怪しげな有象無象の生態が描かれた前作「古都」の世界から一転、華やぎと色香のただよう女の世界がひらかれる。

 下宿の娘が家出して、「僕」と助手の三宅君が探索に乗り出すのだが、娘の仲間の不良少女たちは皆、したたかで逞しい。男をだます如きはお手の物、何事にも女のほうがウワテで、「僕」たちは振り回されるだけが役目だ。ニセ手紙にもウカウカだまされる始末。

 娘たちは自分だけは良家の淑女になりすまし、平然と仲間を裏切る悪女ばかり。高貴な美人タイプほどヤリ手だ。安吾はこれを「決定的な孤独な性格」と評し、「生れながらのものを率直に投げだしてゐる身構へ」だと感服する。

 ヒロインの家出娘だけは、こうした仲間うちにあって1人、純真で生一本な生きざまをみせる。相手の男に「身も心も捧げ、一途に信じきり頼りかゝつてゐる」姿を、安吾は八百屋お七になぞらえ、大人の世界にはないことだと驚嘆する。

 娘が選んだ男も印象的だ。「珍らしいほど澄みきつた目」をして、一切の言い訳も策略もない。掃き溜めに鶴、といった趣がある。

 安吾はこの2人が大好きなようで、めいっぱい肩入れしている。感情をこめ過ぎた部分もあり、そのせいで「古都」とちょっとトーンが違う。鬼の養母と家出娘の対決では、思い余って養母のことを感情的に罵倒する文章さえ書くのだ。

 もっとも養母のことも否定はしない。主婦として家にしがみつきながら、動物的な肉体を持てあまし何もかもを呪って生きるその逞しさを「可憐」と思う。

 家を飛び出した清純な恋人たちと、動物的な主婦と、男をだまし仲間を裏切って生きる悪女たちと、3者は画然と切り離されている。そしてそれぞれ同じように、孤絶した懸命な生を、のたうちまわるようにして生きている。

 本作執筆後、安吾は彼女らに促されたように、自伝的作品群に着手する。

 
(七北数人)
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