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「負ケラレマセン勝ツマデハ」

 税金滞納により差押えを受けた安吾が、何が正しくて何が間違っているかを世に問おうとした日記体のルポ。

「敵」は税務署であり、その上の国税局であり、ひいては国ということになる。生半可な覚悟では書けないハズだが、安吾は飄々と、誰と酒を飲んだかとか日常些事にわたることまで事細かに記していく。一つとしてウソを書いてはならない。その時々の気持ち、出来事、順序、すべてを正確に証拠として残す。それが第一原理だったからだ。

 しかし、日常些事がこんなに面白い作家というのも珍しい。

 時期を同じくして詐欺的な犬医者とも戦闘を開始しており、チャタレイ裁判に弁護の一文を書き、蘇我天皇即位の事実を日本の歴史はもみ消してきたと再説する。坂口家に残された公式文書などを見れば、日付も何もかも、バカ正直なほど正確であるとわかる。

 そして税務署対策ノート5冊を作るくだりに至る。棋士のように相手の心理を読み、手の打ち方を読み、返答如何で枝分かれする対抗手段をつくっていく。作業は地道で真面目、冷静を保つ工夫をあちこちに施しているあたりが涙ぐましく、でも笑ってしまう。

 新全集第16巻にノート原物が翻刻されているが、同巻編集時、原稿整理者の1人がこのノートをしきりに面白がっていた。この人、かなり狂ってるね、と。薬物中毒からは逃れ得ていた時期だが、真面目も度を超すと狂気に見える、ということか。

 涙ぐましい努力がほとんど無駄に終わる、その後の展開がまた、作ったように面白い。

 往年の名画「男と女」の1シークエンスを思い出す。女の家へと急ぐ男が、車を運転しながらあれこれ手順を思い描く。こんな挨拶が粋かな、いや、いきなりこう口に出そうか、次はこうして、相手がこう来たら、こうかわし……。でも、顔を見た途端すべての手順は頭から消し飛び、激情のままに抱きすくめてしまう。

 安吾は一つもウソを書かずに、どんでん返しを効果的に演出している。

 
(七北数人)
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