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「万引家族〔明治開化 安吾捕物5〕」

 因果ばなしや怪奇趣味に彩られた『安吾捕物帖』全20話の中では異色の、優しさが胸にしみる第5話。

 といっても、道具立ては本作でも十分にアブノーマルだ。当時遺伝するとして忌避された業病の血、秘し隠された発狂と自殺、貴婦人の万引癖などが、泥沼の不幸を暗示させながら事件発生へと至る構図は、やはり他の話と同趣向かと思わせられる。タネは明かせないが優しさがカギになっているあたり、「アンゴウ」の作者ならではの感がある。

 安吾自身、本作には手応えを感じたらしく、生前未発表の「第一巻序文」に、「はじめの四回は暗中摸索で、いろいろの形式の試みであった」が、「万引家族」で「一ツのツボを見出すことができ」「以後はこの形式を用いている」とある。

 コメディリリーフの虎之介が勝海舟を訪れて語り出す第1段はヤメになり、通常の客観小説スタイルで事件の顛末が興趣ゆたかに語られたあとで、名探偵結城新十郎の登場となる。前回までのように取り調べで長々とページを割くようなムダはしない。

 構成の変化に伴い、虎之介や花廼屋の出番も減ってファルスの要素がうすれ、お色気担当だったお梨江も姿を消す。ストーリー展開の面白さに重点を絞った結果だ。

 つまり、単行本の冒頭にいつも置かれる「読者への口上」は、はじめの4話にしか当てはまらないという皮肉な結果になっている。それもそのはず、口上はもともと、形式模索中だった第4回にくっつけて発表されたものだった。

 口上では推理のはずれた海舟が最後に負け惜しみを言う設定だが、負け惜しみのタネはすぐに尽きるし、実はキャラも合わなかったのだろう。以後、海舟はいっさい負け惜しみを言わず、人間社会の実相に思いを馳せながら、虎之介を脅したりオモチャにしたりして終わる。第15話以降は海舟の登場すらなくなっていく。『勝海舟捕物帖』と改題した大胆な文庫があるが、続刊を出すのに困るだろう。

 本作での新十郎と海舟は特に男っぷりがよく、はからいも粋である。

 
(七北数人)
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