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「二十一」

 一連の自伝的作品群の第1作。それ以前にも過去の回想を織りまぜた短篇はいくつか書いていたが、精神史的な意味合いを強くもつ「自伝」への挑戦は、これが最初である。

 戦争中に書かれたとは全く感じさせない内容で、筆致もみずみずしい。まだマイナー作家だった時代に、無謀なほどストイックなタイトルで打って出たところに、かえって執筆動機の強さが感じられる。

 絶対の真実を求めて全身全霊入れあげた仏道修行の果て、神経衰弱(鬱病)にかかってしまう生真面目すぎた青春。求道の生涯の、一つの基点がここにある。

「僕が坊主にならうといふのは、要するに、一切をすてる、といふ意味で、そこから何かを掴みたい考へであり、孤独が悟りの第一条件だと考へてゐた」

「絶対」の探求は青年の病などと、したり顔で終わらせられない、過去から現在、未来へとつながる自分の「心」のありか。安吾は実に繊細な手つきで、自分自身にも見えていなかった心の襞を解きほぐしていく。

 それにしても、すべて事実あったことを書いているはずなのに、何もかもが異常事態で、とにかく読んで面白い。こういう文章はホントにうまい作家だとつくづく思う。

 自分自身が鬱病と闘っているさなか、遍歴する先々で待ち受けている人々は、呼び寄せられるように皆、心を病んでいる。

 親友の辰夫が入院する精神病棟の患者や看護人たちに興味を惹かれたり、時には友の態度に嫌気がさして思わぬ悪態をついてしまう。安吾はそういう日常のすべてを偽りなく記そうとする。一瞬ごと、右から左へ移ろう複雑な心の動きを正確に表そうとすると、1文がなかなか切れない。後半、少し文体が変わるのはそのせいだ。すべて必然。奇をてらって形から入る作家は多いが、安吾作品の場合は常に、内容が文体を決定する。

 そして、自分の悪意も苦しさも全部さらけ出してみせる安吾の本質は、底抜けに優しい。

 
(七北数人)
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