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「勝負師」

 坂口安吾という作家の、作家魂がビシビシと伝わってくる傑作。

 内容は将棋観戦記で、この2年前に書かれた「散る日本」と同じく木村義雄vs塚田正夫の名人戦である。2年前は木村が長き名人位を陥落し、今回は名人位に返り咲く、共に節目の勝負となった。

 安吾は小林秀雄との対談で、世評高い「白痴」よりも「観戦記みたいなもの」のほうがいいものだと思う、と言った。その時点ではまだ本作は書かれていないが、作品としての骨は同じ。むしろ本作のほうが安吾の本領がよく表れているかもしれない。

 とにかく全篇に力がみなぎっている。万事にわたって果たし合いの緊迫感がある。

「散る日本」では信長や武蔵など歴史上の勝負師を引き合いに論じていたが、ここではいっさい引用しない。純粋に将棋の話題にしぼって書いているのに、文章には武蔵・小次郎の決闘でも綴っているかのような趣がある。立会人は「ハラキリ見届け役」だし、上着をグチャリと投げ捨てた塚田に敗色を見るあたりは巌流島の決闘そのままだ。

「私は昔から木村名人が好きであつた」と「散る日本」に書いているが、本作でも木村が好きなんだな、とよくわかる。勝負に憑かれた鬼が、勝負に徹して勝つすがたは美しい。

 対局に向かう心構えから負けていた塚田のほうは、時間切れを狙って無筋の手を打つ。勝算があってするならその根性やよし、なければ見苦しいだけだ。さらには「僕の負け方は、見苦しくなかつたでせう」と周囲に何度も尋ねる塚田を見るに及んで、安吾はついに怒りの火を吐く。

「全力をつくし、負けて、泣きくづれたつて、いゝぢやないか」「とりみだして、泣くがいゝぢやないか。変なところへ気を使はずに、あげて勝負に没入するがいゝぢやないか」

 東大病院神経科を自主退院して間もない小康期。数カ月後には発作が再発するので、安吾自身にとっても、この観戦記はただの道楽ではない、イノチガケの立ち会いであった。

 
(七北数人)
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