坂口安吾デジタルミュージアム
  坂口安吾デジタルミュージアム HOME  
introductionPhoto introduction
坂口安吾ってどんな人?
あなたにおすすめの作品
 
ArchivesPhoto Archives
作品データベース
年譜
その他のデータ
NiigataPhoto # Niigata
# 新潟安吾観光MAP
# 安吾賞 松之山情報
# 新潟でのイベント
 
安吾コミュニティ
コラム ブログ
作品紹介 遺品紹介
安吾リンク集
 
 
作品紹介
 
「禅僧」

 禅僧と若い農婦の愛欲譚。幻想小説ではないが、全篇に不穏の気がただよう。

 新潟松之山をモデルとする雪国の寒村が舞台で、初めは淡々と、まるで「村のひと騒ぎ」の裏ヴァージョンのようにして始まるが、油断していると胸に生木の楔を打ち込まれる。

 同時期に書かれた「不可解な失恋に就て」や「雨宮紅庵」同様、マゾヒスティックな男と妖婦(ファム・ファタール)との狂おしい関係が主題。女の造型は本作がいちばん鮮やかで、作中に象徴として語られるメリメの「カルメン」のように力強く奔放だ。安吾はフランスのロマン派では、スタンダール、バルザックと並んで、メリメが大好きだった。

「野性のままの性慾」で次々と男をくわえこんでいく農婦お綱は、ケンカ好きで、男が恐怖に震える様を見るのも大好きな真正のサディスト。自分のホーゼ(パンツ)を盗んだ禅僧を裸に剥いて柱に縛りつけ、まんじりともせず睾丸焼きに興じる。1936年という発表時期でよく発禁にならなかったものだが、この時「キラキラと光る眼付で坊主の顔をむしろボンヤリ視凝めてゐた」お綱は、もはやカルメンを超えて、後年の「桜の森―」の女や夜長姫にまっすぐつながっている。

 こんな強烈な女に惚れてしまった禅僧だが、被虐趣味はなさそうだ。愛だの恋だのからも遠く離れて、妄執、と呼ぶほかない愚かで悲しい煩悩にとり憑かれている。痩せさらばえていくのは、ストーキングに費やされた膨大な時間のしるしであるとともに、恐怖に心身が竦んでしまう日々の連続によるものでもあろう。

 禅僧は最後、衆人環視の舞台に飛び入りして「折れ釘のやうな」手足をお綱にからみつける。妄執がそのまま人間になったかのごとき熱狂ぶりがおぞましくも、いじらしい。

 安吾作品に出てくる坊主はいつもエロオヤジと決まっているが、煩悩もここまで極まれば即菩提、偉い坊さんと呼べるのかもしれない。

 
(七北数人)
Copyright (c) 2005-(財)新潟市芸術文化振興財団. All rights reserved. このサイトについて 個人情報保護方針 ご利用規約 お問い合せ