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「暗い青春」

 安吾の自伝的小説の1篇。アテネ・フランセでの同人誌時代を追懐したもので、年代記的には短篇「二十一」に続き、数え年で「二十五」に当たる。

「青春ほど、死の翳を負ひ、死と背中合せな時期はない」

 不吉な言葉に導かれるように、芥川が自殺した家に集った同人たちは、次々と早世していく。特に、度重なる自殺未遂の末に脳炎で逝った長島萃(アツム)との思い出が多い。

 長島が安吾に宛てた遺言のような、呪言のような、謎の言葉の数々。安吾は意味がわからないと書き、わかる必要もないと書きながら、この小説自体が長島の遺したエニグム(謎)に対する自分なりの解釈になっているようでもある。

 本作の原形ともいうべき遺作「青い絨毯」では、葛巻義敏のほうがメインになっており、同人誌発行にまつわる苦心談などが綴られていた。

 本作では小説家になる夢などはむしろ添え物で、内容もテーマも異質だ。「青い絨毯」よりも、焦点がない。列伝体というか、エピソードの羅列のようなスタイルになっている。

“自伝”としては、これが効果的で、面白い。

 行き当たりばったりに見える思い出の数々が、しだいにみんな同じ色に染まっていき、安吾自身の人間像が逆照射される仕組みだ。こんな錯雑としたスタイルこそが、本物の自分に近づける最適な方法なのだろう。

 だから、長島のことを書いても、長島といる時の自分――その心のもち方に、光が当たっている。

 長島を観客として意識しながら、サーカス一座に入団を申し込む落伍者志願の自分。

「君は虚無だよ」と切なげに呟く長島は、「愚行を敢てした者が彼自身であるやうな、影のうすい、自嘲にゆがめられた顔」だったという。

 安吾もまたそのように、長島のこと、友人たち皆のことを我が事のように引き寄せて書いている。人のこともみな、わが青春、わが暗い青春の一部なのだ。

 
(七北数人)
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