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「保久呂天皇」

 晩年の安吾が取り組んだ「リアル・ファルス」の到達点ともいうべき傑作。

 坂道に全部で11軒しかない部落、という設定がまず寓話的だが、内実は奇妙に生々しい。とてもありえないことのようでありながら、本当にどこかに存在する隠れ里みたいな現実感がある。安部公房の「砂の女」などと同質の、ざらざらした異様な空気。

 こんな小さな部落でも諍いのタネは尽きない。坂上のリンゴ園で金持ちになった中平は、財布を盗られたと、猟銃さげて1軒1軒しらみつぶしに廻る。津山三十人殺しさながらの惨劇も予感されたが、部落内には更なる狂気の持ち主がいて、中平はその男久作に狙いを定める。

 名前からして途方もない夢に取り憑かれそうな久作の夢は、保久呂村の天皇になることだった。

 新興宗教の教祖たちや熱狂的な神がかりになる者たちの心境に、安吾は戦争中から非常な興味をもっていた。幻の長篇「島原の乱」の天草四郎は「絶対の王者」を夢み、「信長」は人間の実相を見つめる「悪魔」であり、それはそのまま「神に参じる道でもある」と安吾は考えていた。信長が安土城の本尊として自分の像を祭ろうとしていた話も「明日は天気になれ」の中で紹介されている。

 天照大神に始まる「保久呂天皇系図」を巻物に仕立て、自分の入るミササギづくりに余念がない久作も、彼ら「悪魔」たちの同類だ。ファンタジックに小さな村の中で、壮大な妄想に身を焦がす。

 ミササギを崩そうとした子供の親が「たたられるぞ! このバカ!」と一喝する。ハッとさせられる一瞬――。

「この部落でタタリを怖れられたのはこのオレがはじめてだな」久作は狂喜するのだ。

 話の結末も凄惨だが、この時すでに「たたり神」と化していた久作のダークな心境が何よりも怖い。

 
 ※「リアル・ファルス」→「目立たない人」作品紹介参照  
(七北数人)
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