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「無毛談」

 どんでん返しが効果的な、小粒の佳品。

 漫画家の横山隆一・泰三兄弟との交流からハゲ談義になる冒頭では、自分の河童ハゲも笑いのタネにして、落語でも聞いているような珍妙な面白さがある。

 でも、ここまではマクラ。本篇はハゲとは関係なさそうに、つるりと始まる。

 時代は遡って1933年頃。矢田津世子と頻繁に手紙のやりとりをしていた幸せな一時期に、新しく雇った女中「トン子さん」の話である。蒲田の家で母や妹と同居していた折だから、常に女中は雇っていたはずで、モデルとなる娘も実際にいたのだろう。

 トン子さんはシャクレ顔で無愛想、「無口で、人のヒミツをジッとうかゞっているような、陰険で、なんとなく不潔な感じが漂っている」と、ひどい書かれようだ。実際には、彼女自身に重大な秘密があり、ひねくれて見えた行動には悲痛な理由があるのだった。

 オチが大事な短篇なので詳しくは書けないが、全体の構成は太宰治の「眉山」とよく似ている。「眉山」のヒロインはトシ子。ちょっと頭の弱い飲み屋の女中で、ガサツな走り方や小便をまきちらしてしまった失敗談などを、作者たち常連客が意地悪く笑い倒すが、実は……と、最後でしんみりさせられる構成。「無毛談」の2カ月前に『小説新潮』に発表された。

 当時の安吾はまだ同誌とは縁がなかったが、安吾も三千代も秘書の高木青年も、みんな太宰の大ファンで「待ちかまえていて読んだ」と『クラクラ日記』に書かれているから、「眉山」も雑誌で読んでいた可能性はある。シモネタつながりもあり、女中トシ子から女中トン子へ、オマージュの気持ちを込めたのかもしれない。

 ショートショートや落語にも通じる、このタイプの作品を太宰は数えきれないほど書いたが、安吾はあまり書かなかった。安吾作品でどんでん返しが最も印象に残る「アンゴウ」は、「無毛談」と同年同月に発表された。ジャンルへの挑戦という意味合いもあったものか。どちらも、作者の人をいとおしむ心が温かく沁みる好篇である。

 
   
(七北数人)
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