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「信長」

 これを安吾の最高傑作に推す人も多い、痛快無比の歴史長篇。

 織田信長を描いた小説やドラマは無数にあるが、これほど“傑物”の魅力にあふれた信長像は見たことがない。

 安吾の信長は、至るところ、あらゆる場面に、知を働かせる。知謀というのとは違う。人の心の裏側まで見とおす眼力によって、敵や身内の者たちがどう動くか、瞬時に判断しながら道を切り開いていくのだ。

 人間通であるだけではダメで、人を驚嘆させ圧倒するほどの胆力と機動力があって初めて、強者たちがコイツに賭けてみようかという気になる。人が人にしびれて次々と仲間がふえてくる、ヒーローもののストレートな展開がゾクゾクするほど面白い。

 一瞬でも判断に迷えば、死ぬ。常に死と隣り合わせのギリギリの状況にあるから、戦闘のない平時でも、体じゅうから火を発しているような緊迫感がある。

 こんな信長だから、ウツケ、タワケと罵られた少年時代の姿も、決して策略としてではない、と安吾は考えた。

 本作を書くにあたって、安吾は膨大な資料を読み込んでいる。有名な「デアルカ」も信長の家来が書き記した言葉だ。ただし、信長の心の中までは想像に頼るしか手はない。

 正真正銘のバカ、つまりは他人の言に惑わされない唯一絶対者ではないか。生き抜くこと、勝つことだけに意識を集中した、真正の勝負師。まるで猿まわしのように腰にさげた火打ち袋にも茶筅マゲにも、戦争に際しての利点があったことを安吾は記す。

 文章も時に大ウツケのように、のんびり鷹揚に構えているかと思うと、一瞬の機に、戦慄がはしる。父信秀の仏前に抹香を投げつけた信長を面罵せんとした筆頭重臣・林佐渡が、振り返った信長に「抜く手も見せずに斬られている幻を見た」ように――。

「手向う者すべてを倒さずんばやまぬ怒り」を発して火の中を荒れ狂う信長。その悪鬼のごとき姿が、まるで現実に目にしたもののように、まなうらに焼き付いて離れない。

 
   
(七北数人)
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