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「飛鳥の幻〔安吾の新日本地理4〕」

 紀行ルポの体裁をとった歴史推理エッセイ。安吾のこの方面での代表作といえる。

 前年「安吾巷談」の連載が大成功に終わったので、文春ではたぶん、同路線でさらに規模を日本中に広げて、ぐらいに考えていただろう。実際、新日本地理10回連載のうちの3分の2はそのようなものでもあった。

 しかし、第1回「安吾・伊勢神宮にゆく」から、第4回の本作、第7回「飛騨・高山の抹殺」、第10回「高麗神社の祭の笛」と綺麗に3カ月ごと、“地理”などそっちのけで“歴史”の謎にのめりこんでいく。この4篇は相互につながっていて、天皇家に支配される以前の土着日本人のすがたや、渡来人が支配した政権内部での民族間抗争など、隠された日本史を解き明かそうとしている。

「歴史タンテイ」と自称するとおり、その探求の仕方はまさに探偵そのもの、非常に論理的かつ想像力が深く遠くへ及ぶので、推理小説と同種のサスペンスがある。

 特にこの「飛鳥の幻」では、古文書に残る意味ありげな虫食いのアトから、衝撃的な結論を導き出す。

「蝦夷入鹿は自ら天皇を称したのではなく、一時ハッキリ天皇であり、民衆がそれを認めたのだ」

 教科書では蘇我氏が天皇を僭称した、としか書いていない。日本書紀がそうなっているからだ。抗争に打ち勝った支配者たちが記したものだから、当然彼らに都合よく出来ている。ただそのウソをあばくのが至難で、一歩まちがえばトンデモ本になってしまう。

 安吾の目のつけどころは実にユニーク、かつ強烈な説得力がある。

 時の権力者たちは必死に偽装を凝らした。それまでの史書を焼き、わざと虫食い穴をあけ、蘇我氏の事件を天変地異でおどろおどろしく記述する。さまざまな証拠を提出して謎をあばく安吾の論旨展開は、まるで陰謀政治家のウソをあばく特捜検事のようだ。

 文体も構成も他の安吾作品に比べてゆるく大味だが、おそらくはそれも意識的で、本格推理小説から文飾を遠ざけたのと同じ心理がそこに働いていたと思う。一切の意匠を省くことで、論理に“詩”が混じることを避けたのだ。


 
   
(七北数人)
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