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「いづこへ」

 安吾の自伝的連作のなかで、漂泊とデカダンの色が最も濃く表れた作品。

 矢田津世子との出逢いから別れまでを描いた「二十七歳」と「三十歳」の、本作は中間の年齢にあてはまる。虚無的な心情は、矢田への思いを断ち切ることによって自ら沈み込んだ沼底だが、ここでは一切、矢田の名前は出てこない。

 戦後、次々と書き継いだ自伝小説の幕開けとなる本作で、安吾は自らの落伍者人生を総括しようとした。落伍者は少年時代からの夢でもあった。放校される中学の机の蓋に「余は偉大なる落伍者となつていつの日か歴史の中によみがへるであらう」と彫って来たという有名な逸話もここに書かれている。

 だから「いづこへ」というタイトルにも強い思い入れがあった。漂泊の人生で、自分はどこへ、いずこへ、進んで行けばよいのか。行方さだめぬ言葉の響きが、心の空洞を表して、寂寥感がにじむ。

 いざ現実に、夢の落伍者になってみれば、生身のデカダンはぶざまで、みじめなものだ。無頼気どりの不良のアンチャンがカッコいいなんて、甘いレベルの話は塵ほどもない。

 バーのマダム(お安さん)との半同棲から、逃避行、知らない街での同棲に至る放蕩の日々。マダムの従妹(「をみな」等では妹とされる)アキともなしくずしに関係をもち、それがバレて修羅場となり、ヤケになって十銭(テンセン)スタンドの醜い淫乱マダムに無理強いに関係を迫ったこともあった。

 しかし、放蕩無頼のさなかにも、至極まじめに生き方を深思熟考しつづけることはやめない。酒色に放縦ではあったが、溺れることは決してなかった。

 だからだろう。デカダン一色でありながら、これほど倫理的な作もない、と感じられる。

 自分の生き方を、進むべき道を、真剣に考え、悩む者だけがホンモノの落伍者になる。真実に殉ずる道はいったいどれなのか――。

 安吾が少年時代から夢みた落伍者とは、求道者の別名であった。

 
(七北数人)  
 
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