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「東京ジャングル探検〔安吾巷談6〕」

 文藝春秋の名編集者池島信平の発案で始まった「安吾巷談」の第6回。12回連載のまん中にあたり、ここに来てようやく巷談のスタイルが確立した感がある。1篇のボリュームも最大で、それまでの回の倍ぐらい長い。

 新宿と上野という当時最も危険だった歓楽地で、交番に一晩詰めて取材するなんて、思いつくほうも危なっかしいが、安吾はこれが面白かったんだろうな、と思う。野次馬根性を極度に刺激する、こんな機会は一生に何度もない。

 書きぶりはルーズで大胆、前半は回想ばかりで、乗りに乗って脱線したかと見えながら、実はこれも周到に、読者へ届く効果を計算してくみこんである。

 回想自体も非常に面白いが、要は自分が昔から見てきたヨタモノたちと、戦後現在のヨタモノと同じところ違うところを見分けることがポイントになっている。人間の本質はいつの世も変わらない。時代のせいにしたり、街のせいにしたりする「識者」に対して、まず釘をさしたというところだ。

 新宿の酔っぱらいの生態は笑えるが、話の本領は上野のどん底のような一帯の描写にある。特に「カキ屋」の不気味さには耳を疑う。50過ぎのジイサンに「一物をみがいてもらう趣味家」とは……。

 そういう世界なのに、上野篇では詩情ただよう表現が多い。バガボンド的な共感と、妖しくも荒廃した街の暗闇でかつがつ生きていく切なさ、そしてある種の安らぎ。

 粋なお巡りさんが懐中電灯を照らす先には、屈託のない笑顔のパンパンがいる。

「彼女は一人で、まっくらなヒッソリしたジャングルのペーヴメントを歩いていた」

 安吾はモダンな歌のフレーズでも口ずさむように、汚濁の街の無垢なパンパンを活写する。

 第5回までにも取材に出かけた回はあったが、競輪で遊んだり熱海の大火を見物したりといった突発的なものだった。計画的な取材はここから始まる。これに味をしめて、この後もストリップ、東京パレス、二科展などへ取材に出かけて行った。

 アドルム中毒の入院治療から快復後の、新生安吾を象徴する連載となり、単行本は文藝春秋読者賞を受賞した。

 
(七北数人)  
 
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