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「母の上京」

 傑作を大量に生み出した1947年の、奇妙な味の一篇。

 安吾に男色のケがあったかどうかという論議が巻き起こる(?)かどうかは知らないが、主人公夏川が自分に惚れる女形ヒロシに抱く「いたはり」の思いが、本作の主旋律である。

 全体の構成はキレイに整っている。突然の母の上京が最初に明かされ、自堕落な生活を見られるのはマズイ、さてどうするかで始まり(起)、自堕落な日々の回想につながって(承)、現在に戻るとすぐに事件(転)、そして思わぬ形で母と再会する(結)。

 特に後半の急展開がノリノリで面白い。それまで少し硬質だった文体もどんどんファルス化して、しまいにはヤケクソ、哄笑するしかないところで終わる。このトーンで全篇を書いていれば、軽快なファルスの傑作になっただろう。

 しかし、この時期の安吾は単純なファルスでは満足できなかった。「妖怪じみた」オバサンとの情事や、もう寝てくれない美人娘へのほろ苦いアプローチなど、ブラックな笑いのシーンに「青春論」や「堕落論」の俗な解釈めいたものが混じってくる。

 ファルスに理屈が混じるのは難点だが、そのおかげで逆に、怒濤のラスト・シークエンスがいっそうハジけて映る。ヤケクソのなりゆきだが、根っこにはヒロシを思う気持ちが見え隠れして、笑いながらも妙にしんみり来るところがある。

 ヒロシのモデルは、本作翌年の「死と影」および戦前発表の「市井閑談」に登場するオヤマのヤマサン。どちらもヤマサンを計略にはめてチョットいじめてしまった話だったので、本作で罪ほろぼしをしたい気持ちがあったかもしれない。

 フンドシ一丁で朝までくっついて眠り、揃って風邪をひくあたり、また、悲鳴をあげるヒロシをひょいと抱き上げるあたり、そこはかとなく色気がにじんでドキッとする。

「すりよるヒロシの体臭が不快であつたが、それを邪慳にするだけの潔癖もなかつた」

 こりゃ安吾は全くのノンケでもなかったかもね、と思えてしまう。本人は怒って否定するに違いないけれど。

 
(七北数人)  
 
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