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「戦争論」

 戦争が終わって3年めに書かれた、硬質の反戦エッセイ。

「戦争は人類に大きな利益をもたらしてくれた」という逆説的・挑発的な一文で始まる。これがまた必ずしも逆説ではないので、誤解されることも多そうだ。

 安吾は例によって、数学の証明問題のように論理を組み立てていく。戦争の利益面から人類の歴史を俯瞰して述べ、現代の大量殺戮兵器出現に至った必然を説く。

「兵器の魔力、こゝに至る。もはや、戦争をやってはならぬ。断々乎として、否、絶対に、もはや、戦争はやるべきではない」

 これが結論である。では、二度と戦争を起こさないためには、どうすればよいか。

 安吾はすでに、戦後初執筆のエッセイ「咢堂小論」において、戦争をなくす道を考察していた。世界を単一国家にすべきと説いた尾崎咢堂の世界聯邦論を高く評価しつつ、クニからムラまで一切のワクを外すなら、家庭をも外さねばダメだと、咢堂の不徹底を指摘していた。個人と個人の対立感情でさえ「むしろ文化の高さと共に激化せられる」ものだから、と。

 考えは「戦争論」でも全く変わっていない。あらゆる枠組みをとっぱらった世界単一国家ができあがれば、大きな争いはなくなるんじゃないかと安吾は考えた。ジョン・レノンの「イマジン」の夢想を先取りして——。

 しかし、それを本当に実現可能なものとして考えていたかどうかは疑問だ。

 当時の安吾は、長篇「火」の構想に全力を傾けていた。戦争というものに潜む“人間臭さ”を全体小説のように描き出したいと思っていた。人間存在に絡まり付いた、生き物としての戦争。その策略性、大小さまざまな階層での心理的葛藤、競争の原理、賭博性、めくるめく刺激、恐怖、異常なものに対する嗜好傾向、むきだしになる本能、功利主義、示威、日和見、権威志向、希求、自由……。

 しかし、「戦争論」で論じられる戦争は、もっと単純だ。単純化しないと純粋な反戦はうたえなかった、ということかもしれない。

 
(七北数人)  
 
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