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「心霊殺人事件」

 奇術師探偵・伊勢崎九太夫が初めて登場する推理短篇。

 初めてといっても次作の「能面の秘密」がラストになってしまうのだが、安吾がこの先も生きていたなら、案外この探偵をもっと活躍させたような気がする。奇術師がオカルト事件のカラクリを暴く、といえば東野圭吾の人気シリーズをほうふつとさせる設定で、この2年前に連載終了した「明治開化 安吾捕物」の現代版のおもむきもある。

 奇術師と心霊術師の対決! 心霊実験会場ではポルターガイストが大暴れ!

 と、こんな惹句が似合いそうな、往年の怪奇探偵小説ファンの心をくすぐる道具立て。冷血非情な高利貸しの悪だくみや、一寸法師のオーバーアクションなども、捕物帖と軌を一にする因果ばなし的な設定だ。楽しんで書いている安吾の顔が目に浮かぶ。

 ポルターガイスト現象は中世から現代まで、世界中に“実例”があり、人々を恐怖させ続けてきた。あれほど科学的な探偵を創出したコナン・ドイルでさえ、19世紀の終わりには心霊主義に傾倒し、降霊会に何度も参加したという。まあコックリさんも寺社祈願も根っこは同じなので、ほとんどの人が、簡単にはドイルを笑えないのだが——。

 そこへいくと安吾の科学志向は徹底していて、霊の存在をカケラも信じていない。死ねばなくなる、と思っていた人らしい。

 霊は存在するか否か、虚々実々のかけひきが始まると思われた矢先の殺人事件。

 しかしこの探偵、奇術師らしからぬ好人物で、トリックよりも人間が好きだ。「心霊術のカラクリ」よりも「人間の心のカラクリ」を解き明かしたくて、容疑者各人の犯行可能性や動機の有無をロジカルに推理していく。そのあざやかな心理解剖が読みどころ。

 ただし、推理小説に心理描写は諸刃の剣で、割と早い段階で消去法的に犯人はわかってしまう。捕物帖同様、謎ときゲームより人間の面白さを優先した結果だ。短篇推理では、犯人当てよりも作風の意外性が勝負どころ、と安吾は考えていたのかもしれない。

 なお、本作は第8回日本探偵作家クラブ賞候補作26篇のうちの1篇に選定された。死去前日に選考が行われたが、「不連続殺人事件」以来の短篇での同賞受賞はならなかった。それでも没後から現在まで十数冊のアンソロジーに収録され、人気を保ちつづけている。

 
(七北数人)  
 
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