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「大井広介といふ男 -並びに註文ひとつの事-」

 

 安吾流ファルスの名調子が聴ける、楽しいエッセイ。

 体裁としては友人大井広介(ヒロスケ)の紹介文なのだが、文章は乗りに乗って、芋蔓式にブッ飛んだエピソードが語られる。普通の文体ではこの奇怪な男を表現しきれない。そんな気持ちが痛快な「話芸」に練りこまれ、まるで一篇のファルス小説を読んだような読後感が味わえる。

 ファルスの主人公、というよりも人間自体がファルス、大井広介はそんな怪人だった。

 戦争中、安吾が作品発表のよりどころとした『現代文学』の主幹にして評論家、数々のペンネームで推理小説なども書いたが、その全体像は(ペンネームの陰に隠れて)混沌としている。そもそもちゃんと仕事をしてたのかどうかも怪しい。

 残っている大井の手紙など、びっくりするほどユニークで、安吾が言うとおりの奇人ぶりが伝わってくる。たった1枚のハガキでも、小さい字で表・裏にびっしり、あっちからこっちへ、番号を振って読むよう指示されている。ハガキの続篇も届いたりする。言いたいことが次々あふれてくるみたいな、でも、その大半がくだらないことで、とにかく読んで楽しくなる、そういう文章だ。

 この野放図なデタラメさが安吾はシンから好きで、愛情こめて、その道を極めてほしいと願っていた。副題の「註文ひとつ」はその事だ。

 しかし、ふたりはのちに喧嘩別れして、註文した願いは実らずに終わった。雑学王の名をほしいままにする趣味人で器用貧乏。常に逃走しつづけるスキゾ・キッズ。極めるのは仕事にも生活にもなんの役にも立たない遊び事ばかりだったから、大井の書いた本で後世にのこるものは1冊もない。

 同じ趣味人の植草甚一が映画やジャズの本で名をのこしたように、文学の達人としての目であらゆる出来事をかきまぜるように解説してみれば、それだけでも前代未聞の文学世界が開けたのではないか。安吾はきっと、この愛すべき友を本気で応援していたのだ。

 なお、本サイトの「年譜」人名録データベースに大井の項目があるので参照されたい。

 
(七北数人)  
 
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