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「傲慢な眼」

 26歳の安吾が、少年と令嬢との淡い恋をみずみずしく描いた傑作掌篇。

 文庫版全集が出るまで埋もれていた作品なので、こんな綺麗な小説も書けるのか、と驚いた読者も少なからずいただろう。

 気位の高い美しい令嬢と、天才画家の片鱗を見せる朴訥で口下手な少年。画家とモデルとして、睨み合うことだけが二人の交流の全部だが、静かな中に果たし合いの緊張感がこもる。ちょっとした駆け引きがあり、最後に謎めいたどんでん返しが待っている。

 ショートショートのお手本のような見事な結構に、何度もうなってしまった。最近見つかった「新伊勢物語」や、後の「アンゴウ」「無毛談」などにつながる、きれいなオチのある端正な小品。こうした作品を量産していれば、読者層の幅も格段に広がっていたはずだが、安吾のめざす文学のおおもとは、完成度よりも混沌・破調を指向する。だからこそ余計に、本作のような珍しい小品が奇蹟のように輝いてみえるのだろう。

 文章も詩的で美しい。それも単なる表現技巧にとどまらず、小説世界と渾然一体、とけあって不可分の、なくてはならない“詩”になっている。

「友よ、詩の終るところに小説がある。併し、小説の終るところにも詩があるのだ」

 早熟の詩人菱山修三が安吾に贈った言葉のとおり。少年画家の微妙繊細な心のひだを表現するタッチは、自然とラディゲのそれにも似てくるようだ。

 タイトルはおそらく「傲岸な眼」だったのを、発表紙の記者が一般読者になじみの薄い言葉だと判じて「傲慢」に置き換えたものだろう。少年の「傲岸な眼」は熱い思いのあらわれなので、「傲慢」とは少しニュアンスが違う。

 そして、ちやほやされつけている令嬢は、賞讃とは異質な眼に過敏に反応する。ねじ伏せずにおくものか、と思う。同時に、人と違うこの少年の天才を、絶対的に信じてしまう。私を惹きつけたのだから、天才であらねばならぬ、と。

 女王様の気まぐれは残酷だ。でも、本当は彼女も、処女で純情なのだ。

 物語の方向性はまるで違うが、構図は「夜長姫と耳男」と面白いほど似ている。

 
(七北数人)  
 
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