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「天皇陛下にさゝぐる言葉」

 戦後、天皇の全国巡幸が数年にわたって続いたが、そのさなかに巡幸をまっこうから批判した、非常に大胆な天皇論。

 天皇の行く先々、都市でも農村でも前もってピカピカに清掃されるから「まったく天皇は箒であると言われても仕方がない」と、のっけから挑発的だ。

 こんな調子だが、基本は真摯な態度での提言であり、天皇制廃止を訴えているわけでもない。だから、これを読んで右翼過激派が事を起こすようなこともなかった。むしろ現代でこの論を打つほうがヤバいように感じる。

 そのせいか、有名なわりに収録本が少ない。発表と同年に『教祖の文学』に収録されたほかは、全集を除くと1968年『新日本紀行』と1989年『日本論』にしか収録されていない。

 沿道で地にぬかずく天皇崇拝者のようすを、璽光(ジコウ)サマと信徒の関係と全く同じだと指摘する。当時の大衆がバカにして嗤った邪教をわざと引き合いに出したのだ。

 中身のないカラ威厳がいかにして世の中にはびこるか。

 架空の威厳を付けるために取り巻きたちが編み出す「妙テコリン」なお飾り。「天皇服」や「朕」の一人称。こういうバカげたものを崇拝し、地にぬかずく「非文化的、原始宗教の精神」が、絶対服従の神をつくり、やがては戦争を始めるに至る、と安吾は言う。

「人間が右手をあげたり、国民儀礼みたいな狐憑きをやりだしたら、ナチスでも日本でも、もう戦争は近づいたと思えば間違いない」

 しかし、この論理、本質的な部分がどこまで世間に通じるものやら……。いまでも大多数の人は「原始宗教の精神」を信奉してるように思えてならない。ナントカの品格みたいな本が続々と出て、続々売れる。有名人が勲章を粗略に扱ったとかで「不敬罪」なる古語がネットで氾濫する。品格ボスたちが首斬り包丁を持って闊歩する。

「陛下よ。まことに、つゝましやかな、人間の敬愛を受けようとは思われぬか」

 安吾の声は熱いけれどもユーモラスで、つい笑ってしまう。現実が滑稽だからだ。現実をわかりやすくピックアップするとギャグになる、そんな世の中は間違ったものに決まっている。

 
(七北数人)  
 
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