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「花火」

 男性作家が女性一人称で小説を書くことは、それほど特殊なことではない。会話や心理を少し書くだけでも、作家は両方の性それぞれになりきって、感じたり、考えたりする。

 ただし、全篇を自分と違う女性の心で書く場合には、それ相応の心構えがいるだろう。本当に、自分に女の考え方、感じ方がわかるのか。想像し尽くせるのか――。

 女性一人称の名手だった太宰と違って、安吾は生涯でわずかに3作、それも1年の間しか書かなかった。1946年11月「続戦争と一人の女」、1947年5月「花火」、同年10月「青鬼の褌を洗う女」。どれも戦争の影をひきずり、死のイメージがそこここに顔を出す。

 特に本作「花火」は異色で、誰にも予想できない、血なまぐさい結末が待っている。

 肉体の求める声だけを頼りに、その場の衝動に身をまかせるヒロインだから、物語の先が読めない。おそらくは作者も、先が読めずに書いている。前後2作にも共通する女性像だが、身内から発する火の凄まじさにおいて、本作のノブ子がいちばん安吾らしい。

 三千代と出逢って間もない頃に書かれたので、三千代と同じ「待合」で育った娘の属性がとりこまれているが、ノブ子の性格にはあまり三千代らしさは感じられない。

 その激しい火の気性や、投げやりな衝動性には、いくらか坂本睦子を思わせるものがある。かつて安吾と淡い恋のような友情のような親しみを交わし合った女給で、やはり彼女をモデルにしたとおぼしい「恋をしに行く」のヒロインも信子という名だった。

 相手のミン平は、性格も口調も少し中原中也に似ている。中也も睦子が好きで、その縁で安吾は中也とも友達になった。実生活はダメダメで酒癖悪く、平気で人を面罵する、世間では敬遠されることの多い男。だが「幼さ」と「気品」があり、人一倍気骨がある。安吾の好きな直線型の男だ。

 ノブ子も、そんな男にいちばん惹かれる。何よりもまず、自分の肉体が感応する。裏と表を使い分ける幇間みたいな男は嫌いだ。いちずな恋に身を焦がし、命を張って刃物を向けてくる男には、ブルブル震えるほどの興奮と陶酔を感じてしまう。もうどうなってもいいと思ってしまう。つまり、物語は、どこへでも転がっていける。

 
(七北数人)  
 
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