1937年、安吾は書きかけの長編小説「吹雪物語」をもって京都に出かけ、仕上げたものの納得がいかず、囲碁に打ち込んだ。「碁は長時間にわたって理知を傾けつくす」「勝敗それ自体が興味」(「青春論」1942年)なので、一時的に「文学と断絶」(「囲碁修行」1938年)するにはふさわしかったのだろう。
昭和初期、碁界は大きな変革期を迎える。21世本因坊秀哉が引退すると名跡を日本棋院に譲渡し、これまで続いた家元制の終身名人から、本因坊戦を勝ち抜いた実力者に名跡が与えられる制度へと移行したのだ。
安吾は、愛好家の作家や学者らの交流を図って作られた文壇囲碁界に参加するようになり、碁を通じての交友も広げていった。
愛用の碁盤・碁石や観戦記、棋風に触れた原稿や書簡など、安吾の囲碁への耽溺ぶりを紹介する。
期間
2023年9月2日(土)~12月17日(日)
会場
旧市長公舎「安吾 風の館」(新潟市中央区西大畑町5927番地9)
主な展示作品
■自筆原稿(未定稿) 【呉清源について】 1951年頃
■メモ 本因坊・呉清源十番碁観戦メモ 1948年
■安吾愛用の碁盤、碁石
■日本棋院免状 二段 1959年11月
■書簡 野上 彰 坂口安吾宛 封書 1951年2月頃
■書簡 尾崎一雄 坂口安吾宛 はがき 1953年5月20日
■書簡 頼尊清隆 坂口安吾宛 封書 1954年1月20日 ほか
■初出誌 観戦記「本因坊岩本薫・呉清源十番碁」讀賣新聞 1948年7月
■初出誌 「呉清源」『文学界』 1948年10月 新潟市立中央図書館蔵
■蔵書 川端康成佇『呉清源棋談・名人』文藝春秋新社 1954年 ほか