坂口安吾は自ら「少年時代から探偵小説の愛好家であった」と言っていますが、戦争中『現代文学』の同人仲間、平野謙、大井広介、荒正人らと内外の探偵小説を回覧して犯人を当てるというゲームをして過ごしたことが、戦後『不連続殺人事件』をはじめとする探偵小説の執筆につながったといわれます。安吾は探偵小説を通じて読者との「謎解きゲーム」を楽しんでいたのです。
江戸川乱歩は『不連続殺人事件』に関して「謎解きゲーム」故にサスペンスや犯罪者の悪念や恐怖がなく不満だとしながらも、犯人に関するトリックと作品全体を構成するトリックという「前例のない新手法」には驚嘆し、堪能したと絶賛しています。
また安吾は謎を解く探偵の姿は「史料を読み解く歴史家の視線にも通じる」と考え、”タンテイ眼”で安吾なりに日本史を明らかにしたいと考えていたようです。
このたびの展覧会では、日本探偵作家クラブ賞を受賞した「不連続殺人事件」を中心に、安吾の探偵小説の魅力と、安吾の歴史観ともいえるタンテイ眼を紹介します。
期間
平成26年8月7日(木)から11月30日(日)まで
午前9時から午後5時まで
会場
旧市長公舎「安吾 風の館」(新潟市中央区西大畑町5927番地9)
主な展示作品
●坂口安吾自筆原稿(未定稿)「安吾タンテイ推理書」
●坂口三千代自筆原稿「その頃の思い出」1957年
●映画「不連続殺人事件」シナリオ・ポスター・スチール写真
●坂口安吾宛書簡 大井広介1950~51年、松本清張1953年
●初出誌・初版本『日本小説』1947~48年(新潟市立中央図書館所蔵)、『不連続殺人事件』1948年 イブニングスター社(新潟市立中央図書館所蔵)、『投手殺人事件』1955年 東方社版、『安吾捕物帖』1955年 春歩堂、坂口安吾・高木彬光『樹のごとくもの歩く』1958年 東京創元社 等 約50点